要求分析の手法に、これという決定的なものはありません。誰のどういう困りごとを解決するのかを明確にし、あとは要求者から根掘り葉掘り聞き出していく姿勢が欠かせません。

要求者の求めることを明確にすることから始める

何か新しいサービスを作ろうとしたとき、要求をとりまとめる作業はとても重要です。

わかったつもりになってどんどん作り始めることも多く、できあがってみるとどうにも要求者の求めるものになっていないことも起こりうるのです。

ですので、要求者が何を求めているのか、そこを明確にしていく作業からはじめる必要があるのです。

そこで問題になるのは、実は要求者自身でも自分の求めるものがちゃんとわかっていないことも多いという事実なのです。

そこを一つ一つ解きほぐしていく、そんな作業が欠かせません。

要求を整理する重要性

商品やサービスを作っていくとき、売れる商品に作り上げるためには、求められているものを正しく知る必要があります。

求められているものが明確にならない限り、ものづくりは正しい方向に進まないのです。

あるいは正しいと思っていたのに、作り上がってから「それはオレが欲しいといったものと違うぞ」と言われてミスマッチに気づき大きな損害を出してしまうのです。

製品ができあがってからその間違いに気づくことほど、残念なことはありません。

その製品を望んだ人にとっても、製品作りに情熱をかけた開発者にとっても、不幸なことなのです。

しかも、間違った認識で作り始めた製品の間違いに気づいても、正しい方向に修正するのは簡単なことではありません。

なぜかと言えば、製品の開発に着手しある程度完成するところまで進んだら、誰もそれをゼロから作り直すことを望まず、なんとか問題のあるところだけ軌道修正して目的に沿うように作り替えたいと思うのが常なのです。

そのとき、無理矢理つじつまを合わせようと改修するので、何とか使えるものにはなっていても、望むような使い勝手の良いものには仕上がらないことが多いからなのです。

要求とは不便や不満の裏返し

このように要求をしっかりつかむことはとても大事なことです。

では、要求って何でしょうか?聞くまでもなくみなさん理解していることと思います。

人がこうして欲しいと思うことが要求ですね。

多くの製品やサービスでは、「オレはこういうものが欲しい」とか「こういう風にできるようにしてくれ」といった要望を元にすることが重要です。

なんとなく「こんなものがあれば売れるんじゃないか?」という根拠のないアイデアではなく、「こういうものが欲しい」とある程度の人が思っていることが大事です。

それは、そういう要望がないと売れないからです。

要望というのは、そこには不便や不満があるから生まれるのです。

そういった不便や不満を解消するものが製品やサービスなのです。

そしてその不便や不満が大きいほど、解消する製品やサービスの価値は高まるのです。

すごく当たり前のことですが、作ることが主目的になり意外と要求を見落としがちなのです。

要求の前に知るべきこと

要求をしっかりつかむことが大事なことはおわかりいただけたかもしれませんが、意外と忘れがちなことがあります。

それは「誰のどんな悩みを解決するのか?」という視点です。

誰のどんな悩みを解決するのかを知らずに作ると、作り方を間違えてしまいかねないのです。

たとえば、薬を飲み忘れるので忘れないようにするサービスを考える場合、健常者であればスマホのアプリを作って通知機能で飲み忘れを防止するというのはひとつの解決方法になりますが、

痴呆の人が薬を飲み忘れるのを防止したいのであれば、スマホ自体を見てもらえずもっと違う解決方法が必要になります。

具体的な利用者のイメージをしっかり持つことが、要求をまとめる際には重要になります。

要求者の思いをしっかり引き出す

要求をまとめる過程で注意したいのは、要求者から要求をしっかりと引き出すことです。

私の体験でも、製品やサービスができてから(できあがりが近づいてから)、「これだと○○の時に使いにくいので良くないです」といった意見が出てくることが少なくないのです。

テレビのCMではないですが、「早く言ってよ!」と言いたいところです。

ところが、そうはいっても要求者がすべての思いを出し切れるかというと、それは結構難しいのです。

要求する人と、その要求をまとめる人、実際に開発する人など、いろいろな立場の人がそれぞれの立場で「こういうときはどうするの?」といったことを聞き出すことで、隠れていた要求が見つかることも多いのです。

「要求者は要求のほんの一部しか言わない」ということを理解した上で、「要求を要求者から引き出す」という意識が欠かせません。