エンジニアは「クソ」がつくほどまじめ
私は、エンジニアほどまじめに仕事をする人種はいないのではないかと思っています。
その働きぶりは「くそまじめ」と言っても良いくらいで、途中で怒り出したり放り出してもおかしくないようなプロジェクトでも、最後まで全うしようと頑張るのです。
そこまで頑張る意義はどこにあるのか?と思いたくなる状況でも、ゴール目指して頑張るのです。
決められた納期や品質を目指して真摯にもの作りに励み、長時間労働や休日出勤も嫌がりません。
それどころか楽しそうですらあるのです。
エンジニアの仕事は、プログラミングであればコードの隅から隅まで、電子回路であれば回路の一つ一つがすべて問題なく動いてはじめて仕事が完成します。
その完成のための道のりは地道な作業の連続で、非常に長く遠いのです。
それを必死の思いで乗り越えて行くのです。
エンジニアの仕事は誰のためのものか
ところが、そうやって「納期を守った」「求められる品質通り作った」と胸を張っているものの、その製品がビジネスとして成功していないことも結構あります。
それは「納期を守る」という大事な目標のために、実はビジネスの成功が犠牲になっていることも少なくないからです。
「これを作り込むには時間が足りないので、仕様から落とします。入れたいなら、納期が3ヶ月遅れますよ。」
というような脅しとすら感じるような態度のときもあるくらいなのです。
その結果、お客さんは本当に欲しいものが手に入らず、納得できません。
それでもエンジニアは「納期を守った」と誇らしげなのです。
この仕事は本当に成功なのでしょうか?
なぜ企画されたものが売れないのか?
私は20代では一介のプログラマでした。
30代に入りチームリーダーやプロジェクトマネージャを経験しましたが、マーケティング部門や商品企画部門が望む製品を品質も納期もコストも守って作っても、ほとんど売れないことが続きました。
あれだけ売れると言っていたのに、なぜ売れないのか?
なぜあれだけ苦労して作ったのに、こんなにも早く販売終了なのか?
私の中に不満がくすぶっていました。
それなら、「自分でマーケティングをわかるようになってやる」、そう思ってマーケティングの勉強をはじめたのです。
エンジニアがマーケティングを理解できない理由
マーケティングの勉強をはじめたとき、幸いにもマーケッターと共に仕事をする機会を得ました。
週に2回も3回もマーケッターと打ち合わせをするのですが、会話がかみ合わないのです。
マーケッターが話すことは面白いけど、何を言いたいのかわからない。
こちらはこちらの考えを話すが、どうも会話にならない。
会話にならないというか、言葉のキャッチボールができない状態です。
マーケッターが話す言葉に私はどう答えていいのか応答できず、技術者の私の話にマーケッターは応答するけれども、その返事は私には何かズレている感じがするのです。
そんなことが半年ほど続いた頃、このままではいけないと思って、マーケッターの考えがわからないとき「どうしてそう考えるんですか?」と聞くようにしてみました。
そしたら、最初はその理由を聞いても「ああ、そうなんだ」くらいだったのが、数ヶ月繰り返すうちにようやくマーケッターの考え方が少しずつわかってきたのです。
そこにマーケッターとエンジニアの決定的な違いが見えたのです。
その違いとは…
マーケッター:人を中心にものを考える
エンジニア:システムを中心にものを考える
これです。
エンジニアに足りないのは不満を感じる感性
エンジニアはシステム中心にものを考えるため、感情ではなく論理的に考えてしまいます。
たとえば、変な例ですがすごく使いにくいWebサービスがあったとします。
普通なら「こんなもの使えない」と放り出してしまうところですが、エンジニアはその使いにくいシステムを使いこなそうとします。
なぜならシステムを中心に考えるから、作りが悪いことも「しょうがないよね」と理解しようとし、自分をシステムに合わせてしまうのです。
ところがマーケッターは、人にとってやさしくないものは「使えない」と切り捨ててしまいますから、それ以上使おうとはしません。
「何よ、これ、全く使い物にならない」とズバッと切り捨てます。
人にとってどうか、これがマーケッターの考えなのです。
エンジニアから見れば、マーケッターは「なんかわがままな人なんだ」と思うくらいなのです。
ところがエンジニアはシステムに合わせようとするために、普通の人なら不満や怒りを感じるようなものであっても、そんなものだと思ってしまうのです。
その結果、不満を不満と思わずがまんできてしまうのです。
ビジネスとは人相手
ビジネスとは人に喜んでもらうためにサービスを提供し、その対価を得ることです。
不満を感じにくいエンジニアは、「人に喜んでもらう」ことが体感的にわかりにくいのです。
人に喜んでもらうことって、すなわち自分が嬉しいことかで判断できるわけですが、自分が嬉しいとか嬉しくないを感じにくい体質になってしまっているのです。
これがエンジニアがビジネスを理解できない最大の要因なのです。
ですので、エンジニアがビジネスを理解するためには「不満や喜びを感じる体質に変わる」ことが必要です。
これは私がマーケティング脳に変化する中でももっとも肝となる部分だとわかったのです。
ビジネスと技術の両方わかる強み
ビジネスを理解するマーケティング脳とシステムを作り上げるエンジニア脳は全く別のものですが、私は長い時間をかけてこの両方を体得することができました。
ビジネスを考えるときはマーケティング脳を、そしてものを作り上げるときはエンジニア脳を、それぞれ発揮させるのです。
そうすることで、ビジネスを理解したままもの作りを進めていくことができるようになったのです。
ただのエンジニアからビジネスコンサルティングができるエンジニアに成長することができたと考えています。
ビジネス相談からはじめ、それを要求としてまとめ、要件化・仕様化・実装という風に作り込んで実現できるところが最大の強みなのです。
組織として案件を受けていると、ビジネスの相談をする人(主には営業)とそれをコンサルするSEと、要求に従い開発するエンジニアと3つの部門の人がいたら、多くの場合お客様の要求から少しずつズレていくのです。
そして気づけばお客様の要望を実現できずに、違うものを作り上げていた、そんなことは起こりうることなのです。
ビジネスを理解するエンジニアなら、そのズレを極力なくすことができるのです。
代表者 | げんぞう |
---|---|
事業内容 | Web集客、IT化支援、プロジェクト推進支援等 |